海外での恋愛・結婚・子育ての悩みについて。
依存症(アディクション, addiction)とは、物質や、特定の行動や、人間関係にしがみつくことを言います。
代表的なところでは、アルコール依存症、薬物依存症、借金依存症、過食や拒食などの摂食依存症、リストカットなどの自傷依存症、仕事依存症、セックス依存症、買い物依存症、共依存症があります。
依存症とは、何かに直面したくないために、逃れて別のことにしがみつくことです。たとえば、サラリーマンが家庭の不和を忘れるために仕事に没頭するとします。この場合、逃れたいことは家庭のことで、しがみつく対象が仕事です。仕事で
頭をいっぱいにしておくことによって、家庭のことを考えなくてすみます。別のサラリーマンが自分の業績を社内に認めさせたいため、仕事に依存するとします。この場合、逃れたいのは、業績をあげられないかもしれない自分自身、もしくは
周囲から認められないかもしれない自分自身です。
ここでは、依存症のうちあまり知られていない、人間関係の依存症をとりあげます。人間関係の依存症は共依存と言われます。アルコールや薬物など、他の依存症は、すべてこの共依存が発端になって出てくると言われています。つまり
依存症はどんなものでも、まず最初に共依存、つまり人間関係の依存症からはじまります。その依存から抜け出せない苦しさから、アルコールや仕事など、目に見える他のものに依存するようになると言われています。
共依存とは、人間関係にしがみつくことです。共依存者は、自分自身の何らかのニーズを満たすために他人との関係を必要としています。たとえば、自分を肯定するために人から認められることや、逆に自分を保つために人を遠ざけて孤立することを必要とします。人に寄りかかることと、人から距離をとることは、一見まったく反対のベクトルのように見えますが、人に寄りかかる人は、自分が自分でいるために人がそばにいることを必要とし、逆に人を遠ざける人は、自分が自分でいるために人を遠ざけることを必要としています。いずれにしても、「他人がそのままでいては自分が困る」「他人を特定の関係下に置くことを必要としている」という点で、人間関係に「依存している」「しがみついている」と言えます。
共依存者は、他人のありのままを受け入れず「この人にこうなってほしい」「この人はこうあるべきだ」という思いを持っています。それはしばしば、「私がいなければ、この人はダメになる」と、自分を犠牲にして相手の世話をしたり、相手の問題を解決しようとする行動になって現れます。あるいは「この人に見捨てられたら、私はダメになる」と、自分を顧みずに相手の期待に応えようとしたり、相手に見捨てられないために極端な行動をとったりもします。他人と思うようにいかないと関係が苦痛に感じられ、人間関係自体を避けるようになります。
共依存という言葉は、もともとアルコール依存症者の配偶者を支援するアメリカのセラピストの間で使われはじました。セラピストたちは、アルコール依存症者の周囲に、アルコール依存症者の世話をしたり、尻拭いをしたりして依存を手助けする人の存在があることに気がつきました。また、周囲の者がアルコールを止めさせようとして必死になる過程で、依存症者の面倒をみることから抜け出せなる、つまり「依存症者に依存する」ようになり、互いに依存し合って悪循環に陥る現象を目の当たりにしました。このように、共依存は1人だけでは成立せず、2人以上の関係の中で互いの言動が互いを巻き込むことがあります。多くの場合、関係に疲れているのですが、互いに離れるのが難しいという特徴があります。
共依存は、健全な人間関係にみられる相互依存とは異なります。相互依存では、それぞれに境界線をもつ一人の独立した人間同士が、対等な人間関係を築くなかで、互いが支え合い助け合っていますが、共依存では、境界線が混乱し、自身が相手のあり方によって過度に決定されてしまいます。そのため、共依存症者は自分を曲げて相手に合わせたり、相手を変えようとしたり、相手から逃げようとしたりします。相互依存では、ありのままの自分を見せて他人と分かち合い、ありのままの相手を受け入れる、という信頼関係がありますが、共依存では、自分の幸せや不幸が相手にかかっており、この信頼関係が欠落しています。結果として、生き方が他人中心になり、自分中心の生き方をすることが難しくなります。
@見ないふり型の共依存
□自分の感情がよくわからない。
□自分の本心を否定したり矮小化したりする。
□自分は利己的な人間ではなく、人に奉仕していると思う。
□人のことで頭をいっぱいにしている。
□人の支えを拒否する。
□傷ついた心を隠して、怒ったり、笑ったり、孤立したりする。
□感情を遠まわしに表現する。
□相手が自分から離れようとすると追いすがる。
□可哀そうな人に会うと自分のことをさておいて尽くす。
A自尊心欠如型の共依存
□物事を自分で決定したり判断したりするのが難しい。
□常に何が正常かを推測しており、自分の確信がもてない。
□自分を情け容赦なく批判する。
□褒め言葉や贈り物を素直に受け取ることができない。
□自分の感情や行動よりも相手の感情や行動を優先させる。
□自分を愛することが難しい。自分が価値ある人間だと思えない。
□劣等感を埋めるために、人からの肯定や受容を常に求めている。
□間違いをおかすと自分を責める。
□自分にウソをついてでも、人から見て正しい存在であろうとする。
□要求や欲求を人に言えない。
□人と比べることが多く、人と接していて、劣等感や優越感を覚えることが多い。
□安心させてくれる人を求めている。
□他人との境界線が混乱している。
B服従型の共依存
□問題や危機が起っている人間関係に長く身をおきやすい。
□拒絶や怒りに合わないように、自分の価値観を曲げて妥協する。
□人がどう感じているかを敏感に察知して、自分も同じように感じる。
□人と違う意見を言うのに抵抗を感じる。
□愛情と性的な誘いを取り違える。
□人間関係が「支配―従属」「利用する―利用される」になりがちである。
□自分と自分のまわりに害があるのに、波風を立てないようにしようと必死になる。
□過去に自分を苦しめた人間関係のパターンをくり返す。
□よく憤っている。人間関係で「傷つけられた」「許せない」「復讐したい」という気持ちが出やすい。
Cコントロール型の共依存
□相手が一人ではやっていけないと思い込む。
□人がどう感じるべきで、本当はどう感じているのか納得させようとする。
□頼まれなくてもアドバイスをする。
□アドバイスが聞き入れられないと憤慨する。
□好意や贈り物を与えることによって人をコントロールしようとする。
□好意をもってもらうために性的魅力やカリスマ性を利用する。
□人から必要とされていないと落ち着かない。
□自分の欲求を満たしてくれる人を探す。
□罪悪感や恥を味わせて人を感情的に揺さぶる。
□自分は絶対に正しいと思う。
□人を操るために無言・威厳・無関心・無力・怒り・その場のみの納得を装う。
□人を改善させたいと思う。
□人をなかなか信用できない。
D回避型の共依存
□意識的・無意識的に人を怒らせて、自分を拒絶させるように仕向ける。
□人を情け容赦なく批判する。
□親密な人間関係を築くことが難しい。感情的・身体的・性的な親密さを避ける。
□他の依存症を併発している。
□話し合いや衝突を避ける。
□自分の心の内を人に話すことに抵抗を感じる。
□束縛されることを怖れている。自分がコントロールできない関係を避ける。
□人にやさしくするが、関係が近づくと冷たくして突き放す。
□人を褒めたり受け入たりすることが少ない。
□人に甘えたり、何かを頼んだりすることに抵抗を感じる。
□ものごとを「黒か白か」「ゼロか百か」のように極端に捉え、ほどほどにすることができない。
(参照:CoDA Co-Dependents Anonymous International Inc.、Coda-Japan『ミーティングハンドブック』)
これらのタイプは互いに重なる部分も多く、たいていの共依存は複数のタイプにまたがる混合型です。また、相手によってどのタイプが強く出るかが変わる場合もあります。たとえば、職場では見ないふり型の共依存症者が、恋愛をするときだけコントロール型の共依存になったり、もともと回避型の共依存症者が、自分より回避型の相手の前では従属型になったりします。
4. 対象別・共依存のチェックリスト
共依存が誰との間で起こるかによって分けたリストです。ここでは、共依存の起こりやすい「恋愛関係」「親子関係」「家族関係」をとりあげます。
@恋愛関係の共依存(恋愛依存症)
恋愛関係の共依存は、恋愛相手にしがみつき、自分の人生を相手に満たしてもらおうとする共依存です。恋愛依存症では、恋愛をしていて気持ちが休まらない、気分が落ち込む、恋愛がとても苦しいものに感じられるという特徴があります。『恋愛依存症~苦しい恋から抜け出せない人たち』の著者伊藤明氏は、恋愛依存症を、自分を手放して相手に夢中になる「共依存」、束縛を怖れる「回避依存」、恋愛に波乱万丈やドラマティックなことを求める「ロマンス依存」、セックスで自身の孤独感を埋めようとする「セックス依存」の4つのカテゴリーに分けています。いずれもが、恋愛相手に自分のニーズを満たしてもらおうとしている状態で、広義の共依存ということができます。
恋愛依存症のチェックリスト
□ほとんどの時間、恋愛相手のことで頭をいっぱいにしている。
□恋愛にエネルギーを費やしすぎて、自分のケアが後回しになる。
□「彼/彼女がいなければ何もできない」「彼/彼女なしでは生きていけない」と思ったことがある。
□寂しさのあまり、好きでもない人とデートをしたり、性的な関係を持ったりしたことがある。
□自分の力で相手を変えてみせると思ったことがある。
□「相手の愛が手に入らないのなら、何か思いきったことをしてやろう」と思った(または、実際に行動した/そうすると脅した)ことがある。
□恋愛相手に大きな期待をかけている。相手に「強く・正しく・完全であれ」という非現実的な期待をする。
□セックスをしている瞬間だけが、唯一愛を感じられるときである。
□恋に落ちるのが早く、冷めるのも早い。
□落ち着いた関係になると物足りなく感じ、新たな刺激が欲しくなる。
□「愛されている」という実感が持てないと、自分の存在価値が消え去っていくように感じる。
□自分の幸せ、不幸せが恋愛相手にかかっている。
□自分さえ我慢すればこの恋愛はきっとうまくいくと思う。
□愛すれば愛するほど、同時に憎しみも大きくなっていくことが多い。
□「けんか→セックス→仲直り」というパターンが多い。
□恋愛相手がプライバシーを持つことが許せない。
□セックスの後、罪悪感に悩まされることが多い。
□恋愛相手が自分から離れていくのが怖い。いつまでも自分を頼ってほしいと思う。
□セックスの後、途端に相手の存在を煩わしく感じるようになる。
□好きなのに近寄られると窒息感を感じ、相手を突き放してしまう。
□自分は人を愛することができないと思う。
□恋愛をすると、自分がひどい人間になってしまう。
□相手が自分から離れていくと、それを自分のせいだと思い自分を責める。
(参照: 伊藤明『恋愛依存症』、実業之日本社、2015)
A親子関係の共依存(親子依存症)
親子関係の共依存は、主に親から子に依存する親主導のタイプと、成人した子から親に依存する子主導のタイプに分かれます。 親主導のタイプは、子どもにしがみつき、自分の人生を子どもに満たしてもらおうとする共依存です。親子依存症は、はた目からは子育てに熱心な親、または、子どものことを愛して心配する親に見えることがあります。しかし、親自身は、子どもの状態に影響されずぎて心が休まることがありません。常に子どもについての不満や不安に駆られていたり、子育てに自信がなくなったり、子育てがとても苦しいものに感じられたりします。苦しさから子育てを放棄したり、子どもと関わるのを避けたりすることもあります。このように、子どもと接していて、親のほうに辛さが生まれるのが親主導の親子依存症の特徴です。
子どもが幼い場合、まだ状況を十分に理解する力がなく、親からしがみつかれても逃れるすべがありません。多くの場合、親のニーズを満たそうとして、子どもなりに懸命の努力をした結果、親を十分に満足させられなかったという敗北感・罪悪感を味わいます。また、親の束縛から逃れようとして、反抗したり、反社会的な行動に走ったり、自分を傷つけたりすることもあります。
親主導の親子依存症のチェックリスト
□ほとんどの時間、子どものことで頭をいっぱいにしている。
□子育てにエネルギーを費やしすぎて、自分のケアが後回しになる。
□自分の時間をもつことに罪悪感を感じる。
□子どもとの時間が苦痛である。できるだけ子どもと離れていたい。
□子どもに自分の思い通りに育ってほしいと思う。子どもについては些細なことでも自分で決めたい。
□子どもに大きな期待をかけている。子どもに「強く・正しく・完全であれ」という非現実的な期待をする。
□子どもの将来を心配しすぎる。「このままでは絶対にまともな大人になれない」などの思い込みがある。
□子どもが変わらないと自分が辛くて仕方がない。
□子どもが自立するのが怖い。いつまでも親を頼ってほしいと思う。
□子どもに甘えられることに嫌悪感を感じる。
□子どもの世話をやきすぎてしまう。子どもがプライバシーを持つことが許せない。
□子どもに寄りかかっている(子どもに面倒を見てもらう、精神的な支えになってもらう、子どもの助けがないと家庭が回らない)。
□子どもには関係ないことで、子どもに八つ当たりする。
□子どもの言動は、すべて「そのように育てた自分のせい」だと思う。子どもを恥ずかしいと思う。
□自分が我慢をしていれば、子どもとはうまくいくと思う。
□子どもの役割は、親を幸せにすることだと思う。
子主導のタイプは、成人した子が親にしがみつき、自分の人生を親に満たしてもらうとする共依存です(子どもが小さいうちは境界線がまだ発達していないため、ここにはあてはまりません)。子主導の親子依存は、親からの共依存を受けて育った子どものリアクションとして出てきます。
子主導の親子依存症のチェックリスト
□ほとんどの時間、親のことで頭をいっぱいにしている。
□親の面倒をみることにエネルギーを費やしすぎて、自分のケアが後回しになる。
□親との間で、自分が犠牲になっている感覚がある。
□親に言われると自分の感情を抑えて従ってしまう。あるいは、自分の感情がよくわからない。
□親の期待には応えなければならないと思う。
□親の前でビクビクする。
□親に寄りかかっている(親に面倒を見てもらう、精神的な支えになってもらう、親の助けがないと家庭が回らない)。
□親と会うとイライラし、情緒不安定になる。
□親に天罰が下ればよいのにと思うことがある。
□親から離れることに大きい不安や罪悪感を感じる。
□親に楽をさせること、親を幸せにすることが子の役目だと思う。
□親が変わらないと自分が辛くて仕方がない。
□親に頼られていないと不安である。
□親が現在の状況にあるのは、子どもの自分のせいだと思う。
□親に期待しては、裏切られるを繰り返している。
□親がいつか本当の自分を愛してくれるときが来ると思う。
B家族内の共依存(家族依存症)
家族依存症は、家族の中で互いに共依存が起こっている状態を言います。恋愛依存症者が結婚して家族になり、そのまま家族依存症になることもあります。夫が妻にしがみついたり、妻が夫にしがみついたり、お互いにしがみついたりしています。子どもがいる場合、家族の共依存に子どもが巻き込まれます。
家庭内にある共依存の特徴として代表的なものは以下があります。
家族依存症のチェックリスト
□ほとんどの時間、配偶者のことで頭をいっぱいにしている。
□配偶者の面倒をみることにエネルギーを費やしすぎて、自分のケアが後回しになる。
□夫婦間関係が、心理的な駆け引き(パワー・ゲーム)になっている。
□夫婦が独立した2人の人間の対等な関係ではなく、主従関係である。
□夫婦の一方が相手の世話をしてばかりいる。
□夫婦のことは恥ずかしくて人に話せないと思う。
□家庭内に隠しておかねばならない秘密がある。
□家庭内に居場所がない。
□家庭で心の休まるときがない。
□夫婦の一方が不満を抱えているが、それについて話し合ったことがない。
□夫婦の一方が一方的に感情をぶつけ、相手は我慢しているだけである。
□配偶者はコントロールしておかないと、何をするかわからないと思う。
□家庭内で言いたいことがあるときは、直接言わず第三者を介す。
□「離婚」という言葉が頻繁に頭にをよぎるが、思いとどまることを繰り返す。
□夫婦の約束事がひんぱんに破られる。
□家族がいつも何かに駆り立てられていたり、疲れていたりする。休むことを知らない。
□家族の精神的役割が決まっており、その役割以外のことをすることが暗に禁じられている。
→なぜ人間関係にしがみつくのか〜共依存とは(その2)へ
→共依存についてのちょっといい言葉を読む
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